青年団『南島俘虜記』

作・演出:平田オリザ/駒場アゴラ劇場/自由席3500円/2003-10-04 19:00/★★★

出演:松井周、山内健司、志賀廣太郎、小林洋平、小林智、ひらたよーこ、木崎友紀子、工藤倫子、辻美奈子、能島瑞穂

とても久しぶりの青年団。それほど遠くない未来。日本は懲りずにまた戦争をしていて、前回よりさらにひどいことになっている。南方の島に建てられた日本人専用の捕虜収容所が舞台。そこでは、そんなひどい状況をよそに、ありきたりの日常が繰り広げられている。捕虜たちは、一応軽い雑務を割り当てられてはいるものの、さぼるのも自由で、食事もおいしい。恋愛沙汰も日常茶飯事で妊娠騒ぎまで起きる(当然女性兵士も捕虜になっているので)。衣食住は一応足りている状況下で、捕虜たちの胸にこみあげてくる空虚感と日本の食べ物に対する愛着。そのぼんやりした感情こそ愛国心と呼ぶべきものなのかもしれない。

ときおりはさまれる笑いのタイミングもいい。平田オリザは抑制された表現が特徴だと思うが、今回ところどころその抑制を飛ばしていたところがあったと思う。それはつまり今この日本の現状への静かな怒りの表れだろうか。

お菓子を食べる音が響きながら溶暗するのがよかった。