チェルフィッチュ『スーパープレミアムソフトWバニラリッチ』
コンビニを舞台にしたコンビニがテーマの作品。登場人物は7人。中間管理職の悲哀をにじませる雇われ店長。店を担当する本社社員まみやSV。店長に対して終始居丈高だが彼もまたノルマに縛られている。バイトのいがらしとうさみ。うさみはコンビニを愛しているがいがらしはビジネスライクであり他の従業員にも過剰なサービスを提供しないように言う。そこに新人バイトみずたにが加わる。そしていつもコンビニをディスるだけディスって何も買わずに買わずに帰る客と、特定の銘柄のアイスクリームを毎日買うほど大好きな客。そのアイスクリームはある日を境に販売中止になってしまう。その進化形のバージョンと思われる新商品スーパープレミアムソフトWバニラリッチが発売されることを聞きつけたみずたには、そのことを客に伝える……。
いまはコンビニがない生活なんて考えられないし、社会の機構の一部ともいえる。その内情やシステムを描くことによって、この社会そのものが照らし出されている。表面的な日常性の中で、単なるいい話になりそうなところが何箇所もあるんだけど、その寸前で流れを冷たく切断される。タイトルの中の「W」の文字が示すように全編を貫くのは冷たい笑いだ。
コンビニの商品は1年で70%がいれかえになるそうだ。うさみはそれを当然のように自分の立場に置き換えて考える。ぼくらをある程度土着的な習俗から解放してくれた商業主義は今何をこの社会にもたらしているのか。それがコンビニを通して垣間見える。
BGMはバッハの平均律クラヴィーア第1巻をチープな電子音で機械的に演奏したもの。それにあわせての役者の動きは従来の日常の所作を異化して痙攣的にしたものから、今回ダンスといってもいいような大胆なものになっていた。
作・演出:岡田利規/神奈川芸術劇場大スタジオ/自由席3500円/2014-12-20 19:30/★★★
出演:矢沢誠、足立智充、上村梓、鷲尾英彰、渕野修平、太田信吾、川﨑麻里子