イキウメ『片鱗』

片鱗
片鱗

黒沢清監督が映画にしそうなモダンホラー。客演の手塚とおるさんがセリフなしで名前もない不気味な男という大胆な配役で驚いた。人の良さそうな父と娘の二人家族が引っ越してきた途端、怪しい人影がうろつき、植物が枯れ、住民が精神の平衡を崩しはじめる……。

ある呪いをめぐる物語だ。今回の舞台と直接は関係ないが、呪いの倫理について考えさせられた。呪いにかけられた人にそれを理由にして立ち退きをせまることが許されるのか、自分にかけられた呪いが周囲に悪影響をおよぼすことを知りながら留まり続けることが許されるのか、そして呪いを自分を愛してくれた人間や次の世代に引き継ぐことが許されるのか。この芝居で呪いの当事者二人がとった行動はサンデル先生の意見をきくまでもなく非倫理的だ。というか呪いというのものが非倫理的で非論理的なものなのだ。しかし現実には呪いというものは存在しないわけで、逆にまだ日本では呪いがある世界の倫理にしばられてしまっている気がした。だからこそ芝居の中だけでも呪いの枠組みを突き崩すような物語がみたい、というちょっと贅沢な望みをもってしまった。

作・演出:前川知大/青山円形劇場/指定席4200円/2013-11-09 18:00/★★★

出演:手塚とおる、安井順平、岩本幸子、大窪人衛、盛隆二、伊勢佳世、浜田信也、森下創、清水葉月