文学座アトリエの会『未来を忘れる』
サンプルの松井周の書き下ろし作品ということで初めての文学座。
薬品の力でゴキブリの姿で生まれた新世代の人間が語る黙示録的な近未来日本史。彼の父と母(ふたりとも普通の人間)の物語が主軸になっている。
いつもそうなんだけど、松井周の戯曲は観念的だ。おそらくサンプル作品では俳優との稽古の中で変形させてゆくプロセスがあるんだろうけど、今回は世界観に若干生乾き感を感じた。
この奇妙でグロテスクな話を新劇ど真ん中の文学座の役者さんたちがどう演じるかというというところに興味の中心があったが、どの俳優もやはりそつがなくうまい。そのうまさのせいで特に年齢が上の役者さんたちはどこか演技がコミカルで、妙な味が出ていた。新劇というのは、ふだんみるアート系小劇場演劇に隣接した世界ではあるんだけど、その間にひかれた線は画然とあって、終演後のアフタートークでそのあたりが垣間見えたりしてた。なんか人間関係が学校的なのだ。そこが興味深かった。
作:松井周、演出:上村聡史/文学座アトリエ/指定席4000円/2013-10-26 18:00/★★
出演:大滝寛、加納朋之、南拓哉、南一恵、藤﨑あかね、増岡裕子