『音のいない世界で』
欲をいえば。
と感想の冒頭に書きたくなる芝居だった。音楽や鳥のさえずりなどの「音」が失われてしまった世界、その音を取り戻すためにはぐれて別々に旅をする夫婦の物語。とてもよくできた大人のメルヘンだった。登場するキャラクターがそれぞれ個性的で子供がみても十分楽しめる内容だが、欲をいえばもう少し深みや苦さがあったほうがよかったと思う。欲をいえば、最後の歌はあまりにも耳慣れたあの曲じゃないほうがよかった。いくらアレンジや歌詞を変えても思わず腰が浮いてしまうメロディーは同じだ。
相変わらず松たか子は手をあわせたくなるようなありがたみのある役者だった。席が遠かったのでよく顔が見えなかったのだが、声とセリフ回しにずっと聞き惚れていた。
作・演出:長塚圭史、振付:近藤良平/新国立劇場小劇場/A席5250円/2013-01-11 19:30/★★
出演:近藤良平、首藤康之、長塚圭史、松たか子