阿佐ヶ谷スパイダース『荒野に立つ』

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作・演出:長塚圭史/シアタートラム/指定席5800円/2011-07-16 18:00/★★★

出演:安藤聖、中村ゆり、黒木華、初音映莉子、中村まこと、平栗あつみ、伊達暁、横田栄司、長塚圭史、福田転球、中山祐一朗、水野小論、川村紗也、斉藤めぐみ、佐藤みゆき

「あさすぱ」といわれて、アサリ入りのスパゲティか、朝温泉に入りにいくことか、どちらだろうと考えていたら、阿佐ヶ谷スパイダースのことだった。かつては、泥と血のにおいがする、黒い猫のホテルとでもいいたくなる作風の彼らだったが、いまやシュールで先鋭的な作風に変貌しつつある。

夫の元から実家に里帰りしている朝緒は、不思議な世界に迷い込んで、なくした目玉をさがすことになる。目玉探偵の事務所で朝緒は3人の探偵に会う。朝緒は「メクライ」という新しい名前を得る……。

時間と空間が錯綜しているのと、「代行」といってときおりある人物がほかの人物の役柄に成り代わるのとで、とても夢幻的で魅力的な世界観になっている反面、(特に「代行」が原因で)物語をいたずらに難解にしている面はある。ほんとうに残る謎は、美雲がいったい誰でその動機が何かということくらいだ。でもそれは語られなくてもいいことだと思う。(それに加えて、意図的なものかどうかわからないが、朝緒の夫佐藤に関してどうしてもよくわからないことがある)。

でも、この作品ですばらしいのは、圧倒的に細部だ。やたらに声のいい担任教師、いつまでたっても誰にも名前を覚えてもらえない田端さん、目玉探しが潮干狩りになだれ込むシーン、狂言回し的な目玉探偵Cこと謎郎、夏カレー、誰かの後を追いかけ続ける新聞配達、望みの場所に行ける七叉路……。どれをとっても、妙に愛着があって、いつまでも忘れないでいたいと思い、そのためにもう一度観劇したくなる。

主要な役を演じた4人の若手女優陣、安藤聖、中村ゆり、黒木華、初音映莉子がみなそれぞれすばらしかった。特に中村ゆりさんがいい。