ままごと『スイングバイ』
作・演出:柴幸男/こまばアゴラ劇場/自由席2500円/2010-03-27 19:30/★★
出演:飯田一期、いしお、板倉チヒロ、折原アキラ、菊地明香、島田桃依、菅原直樹、鈴木燦、高山玲子、能島瑞穂、野津あおい、森谷ふみ、(柴幸男、白川のぞみ)
前作『わが星』で岸田戯曲賞を受賞した柴幸男率いるままごとが、青年団リンクから独立後、記念すべき第一作。
『わが星』では地球の一生をちいちゃんという女の子の一生に見立てたが、今回は、人類全体をひとつの会社「わが社」に見立てている。観客はチケットの代わりにタイムカードを渡されて、それに入場と退場の時刻を刻印できたりする。そして、ビルのフロアは人類の生きた時代に見立てられている。地下300万年は原人の時代で、地上2010年3月27階が現在。日々高くなっている。
主な舞台は「わが社」の社内報編集部。そこに配属されてきた新入社員、、屋上でさぼる部員、そして「退職者」とその家族。基本的には、次にバトンをわたすものとしての「サラリーマン」、「労働」賛歌だ。
前回同様「見立て」の想像力が素晴らしいし、観客を楽しませよう、快適にみてもらおうとするホスピタリティーが気持ちいい。だが、今回はちょっと、類型的で身の回り3mくらいのわかりやすい感傷に頼りすぎたような気がする。
ふりかえってみると、確かに『わが星』もそういうわかりやすい感傷から構成されていた。でも、そういうものをつきぬけて、ぼくたちの生そしてこの世界が期間限定が期間限定であることの悲しみ、喜びを普遍的にとらえることに奇跡的に成功していたのだ。今回も、ちゃんとその普遍的なものは用意されていたのだけど、それがすぐ近くにあるものように感じられてしまった。もっとテーマを深くえぐって、その遠さ、はるかさを見せることもできたような気がする。