阿佐ヶ谷スパイダース『さらば黄昏』

さらば黄昏

過疎の村の駐在所が舞台。駐在である竹井は退職して故郷に戻ろうとしていた。そこへ、不穏な事件が立て続けに起こり、かつて村を隠然と支配し放火殺人を起こし服役していた男が出所して弟と甥を引き連れて村に戻ろうとしているという話を聞く。当時逮捕したのは竹井だったのだ。

「正論人」と陰で揶揄される竹井はこの事態にまっすぐ正攻法で挑もうとする。男たちに会いに行って話そうとしたり、完全排除ではなく包摂する可能性を残そうとしたりする。そして住民たちが主体的に村を守る取り組みをするように促す。

これが正解なのはその通りだと思うが、それが最初から決まっていてそこに一直線に至るだけだったのは物語としてちょっと弱い気もした。紆余曲折があってよかった。だが、正義を貫いた後の爽快感はいい。

基本相手サイドの人間は舞台に登場しないのだが、ワンシーンだけ夜の駐在所で彼らの手のものが竹井の後継者の剣持と対峙するシーンがある。この緊張感が素晴らしかった。

かなりの人気劇団なのにキャパ100人くらいの劇場でやるのはすごい。至近距離で見られるのはプレミアム感がある。

作・演出:長塚圭史/小劇場楽園/自由席4000円/2025-11-08 13:00/★★★

出演:中村まこと、李千鶴、大久保祥太郎、中山祐一朗、志甫まゆ子、宮崎柊太、長塚圭史、村岡希美、木村美月、西山斗真