チェルフィッチュ×金氏徹平「消しゴム山」

消しゴム山

2018年に陸前高田で進む震災からの復興工事を目撃した経験に触発されて、「人とモノが主従関係ではなく、限りなくフラットな関係性で存在するような世界を演劇によって構築できるのだろうか?」という問題提起から生まれた作品。舞台に配置されたさまざまなモノは美術家の金氏徹平さんによるもの。俳優たちは舞台上で即興でそれらのモノと戯れる。

いつものチェルフフィッチュ的なテキストは今回もおもしろい。連休前に洗濯機がこわれるモノローグ&ダイアログ。タイムマシンで未来からやってきた移民の扱いを日本政府の首脳がチェルフィッチュ話法で議論する集団シーン。時間に限界づけられてないらしい存在に、時間に否応なく限界づけされている人間について説明しようとしている一方的ダイアログ(後で気がついたが、説明している相手はモノたちかもしれない)。「観客」がいないモノだけの世界を詠った現代詩。多様性尊重というコードにとりのこされた人の呪詛混じりの演説(少数派として表現されていたけどむしろ現代に暗黒をもたらしている時代精神な気がする)。

舞台のモノたちと俳優たちとの戯れはテキストが進行してない間も続く。むしろその時間のほうが長い。みている間寓意を読み取ろうとしたが、後からすべて即興ということがわかって拍子抜けしたのだった。

モノはあえて俳優たちの邪魔をするように配置したということだが、結局は俳優たちのなすがままで予定調和にしかなりようがない、ただし不意に崩れたり倒れたりして音を立てると、そのときだけ存在感が高まるのだった。今回2019年の再演でそのままの形で上演したとのこと。演劇にとって実験は不可欠だが今回は初演のときに得られた知見を生かしてさらに改善を進める余地があったんじゃないかなと思う。

作・演出:岡田俊樹、セノグラフィー:金氏徹平/世田谷パブリックシアター/指定席5000円/2024-06-08 18:00/★★

出演:青柳いづみ、安藤真理、板橋優里、原田拓哉、矢澤誠、米川幸リオン