阿佐ヶ谷スパイダース『ジャイアンツ』
初老男性が夢の中みたいにぼんやり歩いていると、離婚して依頼疎遠になっていた息子と出会う。息子はぎこちない感じながら自宅に誘い、ささやかな歓待を受ける。翌日ワインとケーキをもって同じ部屋を訪ねると、そこには別の人が住んでいた。男は、不意にあらわれた目玉探偵と名乗る男とその助手とともに息子の行方を捜そうとする。彼らによれば、誰かの回想、いや傾倒の世界に入ってしまったのだという。空には巨大な目玉が浮かび、時間と空間がゆがみはじめる。
この序盤の展開とテンポは最高でワクワクがとまらなかった。全体としては家族の物語。息子の人生の軌跡を追っていく。
中山祐一朗さんは早口なオタク男性という役柄ばかり見てきた気がするが今回の白髪の初老男性役は渋くてかっこいい。富岡晃一郎さんのキレキレの演技は大笑いさせてもらった。息子役はダブルキャスト(もうひとりは次男を演じる)でぼくがみたバージョンでは坂本慶介さんが演じていた。微笑とともに相手の言葉やまわりの状況を受け流しつつ信念をうらに保ち続けていることが表現されていたと思う。
作・演出:長塚圭史/シアタートップス/指定席6500円/2023-11-18 18:00/★★★
出演:大久保祥太郎、坂本慶介、志甫まゆ子、伊達暁、智順、富岡晃一郎、内藤ゆき、長塚圭史、中村まこと、中山祐一朗、村岡希美、李千鶴