KAATプロデュース『掃除機』
岡田俊樹脚本でドイツで上演された作品の日本初演。本人じゃなく本谷有希子演出だ。
3人家族が暮らす家が舞台。妻に先立たれた80代の男性、その娘で学生時代から50代の今まで引きこもりの姉、40代無職の弟。そして話すことができる掃除機が狂言回しとして登場する。現代のある側面を凝縮したような家族だ。彼らは微妙なバランスの上に日常を築いて日々をやり過ごしている。そこに弟の友人ヒデがあらわれ微妙なバランスが崩れいままでの日常が崩壊していくが、それは終わりというよりはじまりのようにも感じられる。
音楽担当でヒデ役の環ROYがとにかくすごい。ずっと舞台奥で効果音の調整をしている裏方の人という感じだったが、突然舞台前面に出てきて、セリフというよりリリック、そしてそれにあわせたマジカルな動きにすべての関心が惹きつけられて目が離せなくなった。そういえば客入れの音楽のチョイスもすばらしかった。彼の存在だけで★ひとつアップだ。
作:岡田俊樹、演出:本谷有希子、音楽:環ROY/神奈川芸術劇場中スタジオ/指定席6500円/2023-03-23 18:00/★★★★
出演:家納ジュンコ、栗原類、山中崇、環ROY、俵木藤汰、猪股俊明、モロ師岡