五反田団『愛に関するいくつかの断片』
2年前に上演しようとしてコロナで中止になった作品の新規まき直し。そのときとはかなり変更したらしい。でもコロナ前の2019年が舞台の物語だ。
加奈が森田に、彼氏の憲治が浮気をしているんじゃないかと相談するシーンからはじまる。その会話がシームレスに加奈とその友人夏子の会話に移行する。つまり最初のシーンは加奈と夏子の会話の回想という扱いなのだ。全編この手法で会話から会話へ、ある時間から別の時間へと、遷移していく。そこでバトンのように渡されるのは「愛」だ。それはダブルミーニングで、それぞれの恋愛関係のことでもあり、愛という名の女性のことでもある。どちらの愛も壊れかけていたり、姿を消していたり、いわば不在であるという状況が共通している。
フランス映画にあるような錯綜した恋愛関係がテーマのコメディーなのだが、そこにミステリー的な要素が入りこんでくる。そして最後は小さな復讐。
単なる友だち役だと思った夏子のキャラクターがすごい。付き合おうという森田をはねつける場面は愛に対する渇望の底知れなさというか業のようなものを感じた。演じた柳英里紗さんがよかった。
作・演出:前田司郎/アトリエヘリコプター/自由席4500円/2022-04-29 18:00/★★★★
出演:浅井浩介、岩瀬亮、鮎川桃華、西出結、宮部純子、柳英里紗