ミクニヤナイハラプロジェクト『はじまって、それから、いつかおわる』
中央に白い机と椅子、棺のような箱が置かれ、その周りを客席が取り囲んでいる。ちょっとままごとの『わが星』を思い出した。
事故で10年以上植物状態でいよいよ人工呼吸器を外すという奇妙な時間差のある死の形をテーマにした作品。家族はもう思い出は何も残っていないと言う。だから進んだり戻ったりの日付のコールに続いて、展開されるのは思い出ではなく複数の視点からの過去の日々の断片だ。そこには昏睡中である患者のものも含まれる。類似項として、山で遭難して10年以上遺体が見つかってないケースの関係者も参加してくる。
動きと言葉が反復してストレートな演劇というより、歌のないミュージカルと言った方が適切かもしれない。おおむね静かなトーンで進行するが時折「汚い手で触るな」という唐突な強い言葉があらわれる。これがどういう文脈に位置づけられるのかは結局わからないままだ。
最後上演日の日付のコールとともに登場人物と観客は過去の堂々巡りから解放され明日へと踏み出す。
作・演出:矢内原美邦/吉祥寺シアター/自由席4000円/2022-03-26 19:00/★★
出演:山本圭祐、沼田星麻、間瀬奈都美、昇良樹、原田理央