ミクニヤナイハラプロジェクト『曖昧な犬』
不条理劇といっていいのだろうか。男たちが窓のない部屋に閉じ込められて外に出られないというシチュエーション。最初二人なのだが、彼らの様子を外から見ていた男が何かの拍子にそこに入り込んでしまい三人になる。彼らは記憶は途切れ途切れで自分たちがいつからそこにいるのか、カメラでずっと監視されていることなどを忘れてしまい、同じことを繰り返す。
絶望もまた繰り返す。その合間に彼らに光を与えるのは過去の記憶だ。歩道橋からのジャンプ、生まれる前からいる犬の瞬間、義足の少女とのふれあい。記憶は楽しいものではなくどちらかといえば後悔混じりの苦いもので、それがほんとうにあったことなのかどうかもわからない。それでもそれは何もない閉ざされた部屋で無為に流れる時間よりもはるかにリアルなものなのだ。
と今まで書いたことからすると静かで思弁的な演劇かと思ってしまいそうだが、さにあらず。男たちが舞台でドタバタ暴れまわり、その姿に笑いがもれてしまう作品なのだ。俳優たちそれぞれよかったが、特に菊沢将憲さんの存在感が素晴らしい。
作・演出:矢内原美邦/吉祥寺シアター/自由席3500円/2018-03-24 18:00/★★★
出演:石松太一、菊沢将憲、細谷貴宏