青年団リンク・サンプル『シフト』
作・演出:松井周/アトリエ春風舎/自由席2000円/2007-02-03 19:00/★★★★
出演:山村崇子、辻美奈子、古舘寛治、古屋隆太、小河原康二、石橋亜希子、荻野友里
青年団の俳優として松井周をみてきて、彼が作・演出をする芝居に興味をもった。
舞台を円形の大きな縄がとりまいている。相撲の土俵だ。天井から、テニスラケット、かばん、フリスビー、玄関マット、たんすなどなどさまざまものがつるされている。
奇妙な因習が残る地方の村。もとの村があった場所はダムの底に沈められ、今では数人しか残っていない。彼らはある「高貴」な血筋の子孫であり、一族の栄華の象徴である「白子様」という赤ん坊を生み出すため、乱交や近親姦を繰り返していた。東京からそこに婿入りしてきた青年はその奇妙な風習に翻弄される。
そこにも「郊外化」の波は押し寄せ、巨大なショッピングセンタートピカが人々の生活に欠かせない場所になっている。青年もトピカに勤めることになる。
最後に勝つのは、村の血統でも都会人の理性でもなく、「郊外」の幻想だ。結局トピカとそれを生み出した欲望がすべてを支配する。
会話の部分だと凡庸に見える人物たちが、モノローグの部分だと輝きだす。とても魅力的な演出だった。
偶然、東浩紀・北田暁大『東京から考える―格差・郊外・ナショナリズム』を読み終えたばかりだったが、テーマが共通していて驚いた。