innerchild『アメノクニ/フルコトフミ~八雲立つユーレンシア~』

innerchild『アメノクニ/フルコトフミ~八雲立つユーレンシア~』

作、演出:小手伸也/時事通信ホール/指定席3200円/2007-01-13 19:00/★★

出演:古澤龍児、菊岡理紗、土屋雄、三宅法仁、宍倉靖二、小手伸也、進藤健太郎、板垣桃子、ハルカ・オース、石川カナエ、尾崎恵、貝塚建、小柳こずえ、三枝翠、桜子、関根洋子、関本なこ、長尾純子、初谷至彦、馬場巧

日本神話をテーマにしたスピリチュアルな作品という点では、これまでと同じだが、今回は連作の第1作ということもあってか、よりストーリーの複雑さが増している。

架空の三国ユージア、アシバール、ユーレンを舞台に神話「フルコトフミ」(つまり古事記)の編纂をめぐって物語がくりひろげられる。当初国譲りの神話のようにユージアが「ヤマト」、アシバールが「イズモ」になぞらえられるが、後半ではそれに昭和史が重ね合わせられて、アシバールは中国、その王が逃げた土地ユーレンは満州になぞらえられる。ラストエンペラー溥儀の物語だ。

これらの騒動を不思議な立場でみているのがアメノクニからやってきた人々。今回はまだ彼らの目的はよくわからない。最初アメリカをなぞらえているかと思ったが、未来の日本のようにも思える。

物語はまだ途中。ラストエンペラーの物語は未完、アメノクニの正体も謎のままで、「フルコトフミ」の編纂者ヤスマール(太安万侶)の仕事が終わっただけだ。連作なので仕方がないが、今回は次回以降の伏線となる部分があり、若干消化不良だった。また、ヤスマールは、為政者の都合で歴史を歪曲して神話を書くことに悩んでいたが、その悩みの奥行が描けていないというか、単なる青年期の潔癖さにしか見えなかった。

物語のスケールは大きいしアイデアもすばらしい。演出も的確で洗練されている。だが、まだ何か足りないものがある。それは、どんな完璧な図式をもってきても、そこからはずれてしまうノイズのようなもの、つまり人間を描くということのような気がする。