青年団若手自主企画『会議』

作:別役実、翻案、演出:武藤真弓/アトリエ春風舎/自2000円/2006-07-15 19:00/★★★

出演:永井秀樹、安倍健太郎、村井まどか、田原礼子、後藤麻美、古舘寛治、工藤倫子、根上彩、熊谷知彦、山本裕子、高橋智子、他一名

ぼくがはじめてみた芝居は岩松了の作品だったけど、その前から別役実の戯曲は読んでいて、その独特の笑いのセンスや不条理な世界がお気に入りだった。いわば元祖演劇体験をさせてくれた劇作家だ。この『会議』もおそらく読んだことがあるはずだが、すっかり忘れていた(演出家がオリジナルの台本に手をいれているそうなのだが、どこがどうちがうかまったくわからない)。

研究者が、人間の「会議本能」の研究のため、空きスペースに人を呼び込んで自然発生的に会議がはじまるかどうかを実験しようとしている。つまり、主催者側の実験という「現実」の中に会議という「虚構」を立ち上げようとしていて、この2つのレベルはかっちり分離されているはずだった。ところが、高級ライターの紛失という問題が発生して、「現実」と「虚構」の間が干渉せざるを得なくなってしまう。

ここまでは笑い話だが、さらに会議の参加者の男性が自分の怪我の原因はこの会議の参加者の誰かに暴行されたからだと訴える。最初は妄想のようにみえるものの、リアリティが一気に高まって、ついには実験という「現実」の根拠さえもがすべて奪われてしまう(このあたりグレッグ・イーガンの『順列都市』のラストを思わせる)。突然のクライマックスのリズミカルな演出はすばらしい。

暗転のあと出来事の後始末をめぐって会議はなおも続く。これこそほんとうにリアルな会議だ。会議は続く中芝居は終わり、観客だけが退場を求められる。

最後に余談だが、別役実の戯曲が本屋で普通に入手できないのはこの国の演劇にとって大きな損失だと思う。