青年団『砂と兵隊』

作・演出:平田オリザ/駒場アゴラ劇場/自3500円/2005-11-26 19:00/★★★

出演:山内健司、大塚洋、ひらたよーこ、小林智、石橋亜希子、高橋智子、志賀廣太郎、根上彩、たむらみずほ、渡辺香奈、古屋隆太、堀夏子、小笠原康二、福士史麻

最近の平田オリザは日本人と戦争というテーマを扱った作品が続いている。『南島俘虜記』は、未来のあり得べき戦争で、日本本土を巻き込んで泥沼となった戦況を背景に捕虜になったあとの永遠のように長く続く退屈を描いた作品だし、『御前会議』は第二次世界大戦のときの日本首脳部の意志決定を戯画化した作品だった。未来、過去ときて、今回は現在。現在進行形でおこなわれている戦争をテーマにしたナンセンスコメディーだ。

遊園地再生事業団の砂漠監視隊シリーズを思い起こさせる一面に砂を敷いた舞台。そこに登場するのは日本軍の兵士5人、出征した夫を訪ね歩く妻、出奔した母親を探す父と三人姉妹、新婚旅行の夫婦、敵の兵隊二人。そこでは血なまぐさい戦闘はおこらない。殺戮は遠くからボタンを押して行なうものだし、日本軍の任務は行軍そのものだ。誰も何のためにどこに向かっているかを知らない。でも、単なる不運で人は死ぬ。勝者もいなければ敗者も存在せず、ただ延々と進み続ける、運が続く限り。

最後にトリビア。兵士の一人が本部との連絡に使っていた通信機器は、大きさからして初代ゲームボーイだと思う。