地点『雌鳥の中のナイフ』
作:デイヴィッド・ハロワー(訳:谷岡健彦)、演出:三浦基/アトリエ春風舎/自2500円/2005-01-01 19:00/★★
出演:安部聡子、大庭祐介、小林洋平
不思議な抑揚と間で語られるセリフ。言葉を異化させて、内容でなく言葉そのものに注意を向けさせようとしているのだ。
登場人物は3人。農夫とその妻、そして村外れの挽き臼小屋の男だ。一筋縄でいかない難解な物語だが、とりあえず構造としてみえるのは、イプセンの『人形の家』的な、女性の自立ということで、人形の家ではどちらかといえば社会的な自立だったけど、こちらはもっと根源的に、自分の言葉、すなわち自分の世界をもつということが描かれていたような気がする。「雌鳥の中のナイフ」というのは、神が頭の中に新しい言葉を与えてくれることを、雌鳥の腹にナイフを突き刺すことにたとえている。その比喩の通り言葉は危険なものであり、殺意につながってゆくわけだ。
古典以外の海外の戯曲をみるのははじめてだが、かなり新鮮だった(理解できたとは言い難いが)。日本でこういうのを書いてもほとんど受け入れられない気がするのは、演劇の裾野の広がりの違いだろうか。