竹内薫『超ひも理論とは何か 究極の理論が描く物質・重力・宇宙』
近代以前は万物の源泉を探求するのは哲学の仕事だったけど、今ではそれは自然科学に委ねられている。晦渋な形而上の言葉に代わるのはそれ以上に難解な数式だ。その数式をできる限り使わずにイメージだけでも理解してもらおうというのが本書の目的になっている。
すべては極めて微少な10次元空間のひもから構成されている。以前読んだ本では、それが超ひも理論の教えだった。それから十年以上たって最近ひもともご無沙汰だなと思っているときに、本書が出版されたことを知った。一時停滞したが、90年代半ば以降いくつかの発見があって理論が進展したそうだ。それによると、ひもに加えて「Dブレーン」と呼ばれるものが、大きな役割を持っているとされているようだ。Dブレーンというのはひもの動きを制約する境界条件の役割をする、-1~9次元の面である。この宇宙そのものがブレーンであるという説もあって、それによるとビックバンは2つのブレーンの衝突によって起きるらしい。
超ひも理論は重力理論と量子論を統合するために考え出されたものだが、あくまで仮説に過ぎず、正しいという確たる証拠はまだ見つかっていない。超ひも理論には5種類のバリエーションがあるため、それらを統合するようなM理論というのが提唱されているらしいし、ライバルの理論として時空は非連続であるというループ量子重力理論(これが正しいとすると光速度は一定でなくなる!)もある。いくつかの実験を通して理論の正当性を確かめることが可能なそうなので、ここ数年の動きが楽しみだ。
さて、超ひも理論について理解できたかといえば、答えはNOだ。具体的なイメージが挙げられて、何となくわかったかなと思える瞬間もあるのだが、次の瞬間にあっさりその直感は否定される。やはり数式をいじくり回す中で理解していくべきものなのだろう。そのためには基礎から勉強し直さなければならないが、ひもは無理としてもまずは量子論くらいはちゃんと理解しようかと思うのだった。
★★