Pedro Domingos “The Master Algorithm: How the Quest for the Ultimate Learning Machine Will Remake Our World”
次の本までのつなぎとして軽い気持ちで読みはじめたらちょうど半年かかってしまった。理由その一、英語だということ。日本語の3倍くらいかかる。理由そのニ、緊急事態宣言で通勤時間がなかったこと。通勤が一番の読書シチュエーションなのだ。そして理由その三。思ったよりずっと本格的に書かれた本で分量が多かったこと。数式やコードがほとんど出てこないだけで機械学習のエッセンスは余すところなく語られていた。
簡単に要約する。まず現在利用されている機械学習の手法を5つに大別しそれぞれを種族として紹介する。いわく、Evolutionaries(遺伝的アルゴリズム) Connectionists(ニューラルネットワーク), Symbolists(論理演算), Bayesians(確率推論), そしてAnalogizers(SVMなど)。それぞれの来歴と仕組みが説明される。表面的には異質なこの5つを束ねてマスターアルゴリズムというのを作ろうというのが本書のテーマ。読む前は漠然としたコンセプトの話かと思っていたが、筆者たちのグループは詳細なコンセプトだけでなくAlchemyというツールを実装している。まだまだ課題はあるようだが、実装が存在するのはすごいことだ。
終章の “This Is the World on Machine Learning” はマスターアルゴリズムが存在することを前提とした未来の話だ。個人的にはこの章が一番おもしろかった。
- 自分の分身を構築し、デート相手のマッチングや仕事の面接を含めて代行してもらいあらかじめスクリーニングする。
- プライバシーの概念は再構築を迫られる
- 人間の仕事が奪われる - 対人の仕事は残るが、知的労働の方が先に不必要になる。ベイシックインカムが始まり失業率が高い方がいいことに。
- 戦争は機械が行う - 人間の戦闘が禁止される。筆者はそれをよいことと考えるが、自身認めているように始めるハードルが下がり、終わらせるためには結局人的被害を高めていくことになる気がする。
- マスターアルゴリズムで遺伝子操作が容易になり、進化2.0がはじまる
とにかく時間がかかった。リハビリが必要だ。