柳瀬博一『国道16号線 「日本」を創った道』ebook

国道16号線―「日本」を創った道―

国道16号に関する個人的な話から。

もともと都心を散歩していてそれが徐々に同心円状に広がっていったのだけど、あるときから16号という道路をやたら目にするようになった。それもまったく離れた場所でだ。あるときは埼玉、あるときは千葉、あるときは八王子、あるときは横須賀。あまりにも神出鬼没すぎて、巨大な環状道路だということがすぐに思いつかなかった。

環状と書いたが、実は国道16号は完全な環状にはなっていない。横須賀の走水という交差点からはじまり、横浜中心部を走り抜け、横浜線に沿う形で八王子に向かい米軍基地のある福生、そして埼玉県の入間から春日部、千葉県に入って野田市から千葉市中心部まで南下して東京湾岸の工業地帯を経由して富津市のT字路で唐突に終わる。総距離326kmだ。名目上は金谷から久里浜の東京湾フェリーも国道に含まれていて、それで環状と言うことになっている。

本書は、国道16号が単なる港外道路ではなく、極めて特殊な道路だということを解き明かすのを目的にしている。章ごとにみていくと、第1章では16号の沿革が語られ、第2章では地形的な特徴にフォーカスがあてられる。第3章では音楽を中心とした文化、第4章では歴史、第5章はそのなかから「絹」を取りあげ、最後の第6章では、少子化やコロナ以降を見据えて16号の未来が語られる。

第1章冒頭の実際に車で走って経路を描写部分は、本書の白眉で、内容のインデックスにもなっているので、ぜひ目を通してほしい。車が大量にゆきかう幹線道路そのものは歩いていて楽しいものではないので敬遠したくなるのだが、16号をもっと広い視野でみると自然や文化などみるべきものが多いことを教えられた。近いうちに歩いてみたいところがいろいろ見つかった。

★★