劉慈欣(大森望、光吉さくら、ワン・チャイ訳)『三体』
文革の混乱でなにもかも失った女性科学者の物語から始まり、現代の科学者たちの謎の死へと一転する。そして、写真に写り込むカウントダウンの数字と『三体』という謎のVRゲーム。序盤からもう圧巻だが、中盤以降の謎解きパートになっても、アイデアの噴出量が落ちない。圧巻のSFエンターテインメントだった。
ハードSFみたいに科学的な正確さや緻密さを重視するのではなく、荒唐無稽になることを恐れずにこれでもかと大風呂敷を広げるタイプだ。
三千万人の兵士を使って手旗信号のコンピュータを作るエピソードが出てきて、『折りたたみ北京』で読んだあの人だったかと理解した。
組織の描き方や、人物のキャラクターづけ(はぐれものだけど優秀な刑事がでてきたりする)ところは日本のエンタメ作品と似ていると思った。やはり影響のようなものはあるのだろう。
まだ三部作の第一作でこの作品では問題が明らかになっただけ。来年以降飜訳される続編が楽しみだ。
★★★