君塚直隆『ヨーロッパ近代史』ebook

ヨーロッパ近代史 (ちくま新書)

ルネサンスから第一次世界大戦までの「ヨーロッパ近代」の歴史を、各時代の主要人物をひとり選び、その人生をたどることによって浮かび上がらせようとしている。

  • ルネサンス: レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452-1519) 彼は芸術家であると同時に軍事技術者だった。
  • 宗教改革:マルティン・ルター(1483-1546)
  • 近代科学の誕生: ガリレオ・ガリレイ(1564-1642)
  • 市民革命のさきがけ: ジョン・ロック(1632-1704)
  • 啓蒙主義: ヴォルテール(1694-1778)
  • 革命: ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ(1749-1832) ゲーテが一国を導いた政治家だったことをはじめて知った。
  • 進化論: チャールズ・ダーウィン(1809-1882)
  • 第一次世界大戦とロシア革命: レーニン(1870-1924) 本書唯一の西欧以外の人物。

このリストをながめただけで、本書の視点は「宗教と科学の相克」だと「はじめに」に書かれている通りであることがわかる。人々の価値観や生活を絶対的に定めていたキリスト教の力が徐々に弱くなり、科学が隆盛になる。同時にそれまで集団に埋もれていた「個人」が名前を持ち、時代を引っ張るようになってゆく。本書のスタイルはまさにそのことを裏書きしている。

筆者によると第一次世界大戦以降、この変化の流れが逆転しているという。「個人」は大衆の中に埋没し、さらにインターネットによってより匿名性が重視されるようになっている。今こそ「責任ある態度」に裏打ちされた「個人」という考え方をもう一度見直してみてもいいのではないかというのが、筆者の提案だ。

読んで感じたのは、ヨーロッパが隆盛した力の源泉は多様性にあるということだ。さまざまな勢力が権力や富や真理を求めて相争ったり協力しあう。それが坩堝のような効果を発揮して変化を続け新しいものを生み出すパワーを生み出したのではないだろうか。

★★