カルヴィーノ(和田忠彦訳)『魔法の庭・空を見上げる部族 他十四篇』
カルヴィーノが1946年から1958年に書いた短編の中から訳者が編んだ16篇。カルヴィーノらしい摩奇想天外な世界を期待していたのだが、全体としてリアリスティックな作品ばかりだった。10ページ前後の短い作品ばかりであっという間に読み終えられた。
一番気に入った作品は『猫と警官』。警官になりたての若者が広大な迷宮的な建物の中を武器を見つけるための捜索に加わるんだけど、猫を追いかけ回して色々な人々に翻弄されるうちに捜索は終わってしまう。
リアリスティックと書いたが表題作の『魔法の庭』は幻想的だ。二人の子供が奇妙な庭に迷い込む。そこの住人らしき子供は妙におどおどしていて先に迷い込んだ先客のように見える。
冒頭の『街に吹く風』に漂うどこにも属さない開放感はちょっと村上春樹の初期作品を彷彿とさせた。
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