岸本佐知子編『変愛小説集 日本作家編』
文庫化されてた。でも、久々に電子版を買って読む。
変愛小説集も3冊目。これまでは海外小説の翻訳だったが、今回は日本作家の作品だ。既存の作品から選んだのではなく、編者の岸本佐知子さんが作家に依頼し、書き下ろしてもらうというおもしろい成り立ちだ。
作家の名前を列挙すると、川上弘美、多和田葉子、本谷有希子、村田沙耶香、吉田知子、深堀骨、安藤桃子、吉田篤弘、小池昌代、星野智幸、津島祐子。
なぜか、カラスが重要な役割を果たす物語が二編も含まれていた。偶然だと思うがおもしろい。
冒頭2作品はまぎれもない傑作。まさに川上弘美ワールドの、さまざまな動物の遺伝子をまぜて工場で人間を作るようになった未来におけるはかない生と愛を描いた『形見』、文字が織りなす幻想的でエロティックで漢字圏以外への飜訳困難な多和田葉子『韋駄天どこまでも』。
いちばん好きなのは、吉田篤弘『椅子の上から世界は何度だって生まれ変わる』だ。電球交換士という職業がいいし、夜の箱や、口からこぼれでる景色という道具立てがすばらしい。長編になりそうな物語だ。
★★