Robert A. Heinlein “The Door into Summer”
SFの古典的名作。もちろん再読だ。この間新訳が出たが次読むときは英語でと決めていた。SFでこみいった文学的表現がないから読みやすいかと思ったが俗語のオンパレード。かなり手こずらされた。
あらためて読んでみると猫のピートのかわいらしさが胸をうつ。猫飼ったことはないからどこまで正確かわからないけど猫の心理がちゃんと描かれているように思う。猫小説といわれる所以だ。猫と同じくらい愛らしく描かれているのが11歳の少女リッキーだ。じらしたあげく最後の最後に登場する。主人公が彼女に婚約指輪を渡すところはさすがに見てはいけないものを見た気になるが、それでも目がうるんでしまう。
1956年に発表されたこの小説の中では1970年に冷凍睡眠とお手伝いロボットが実用化され、2000年には風邪が根絶され虫歯の画期的な治療法が開発されており、タイムトラベルも研究レベルで可能になっている。ぼくらはまだそれらのいずれも手にしてないが通信や情報伝達だけはこの小説の中より進んでいるようにみえる。世の中はいびつに進化している。
夏への扉は必ず見つかる。その素朴な楽観はもはやぼくらが失ってしまったものだ。未来は明るいなんて、トランプ大統領という悪夢をリアルタイムで見ているととても言ってられなくなる。ピートもリッキーもいない世界にぼくらは生きている。