青年団+第12言語演劇スタジオ『新・冒険王』
少年時代の平田オリザ自身の体験をベースにイスタンブールの安宿に集う日本人を描いた『冒険王』の続編。前作は1980年の設定だったが、今回は2002年の同じ宿を舞台にしている。正確には2002年6月18日、日韓共催だったワールドカップ日本が敗退し韓国が準々決勝進出を決めた日だ。ちょうど韓国-イタリア戦の試合時間が舞台の時間に重なっている。
前作では東アジア系は日本人ばかりだった宿の客も韓国の経済発展、自由化に伴い韓国人が増えている。登場人物も半数は韓国人で、共同脚本、共同演出としてソン・ギウンという韓国の演劇人が入っている。
近いようで遠く遠いようで近い隣国韓国。結局人は個人ごとに全部違うのだが、各世代固有の事情、徴兵制、儒教的な長幼の秩序など、日本と違う独特の奥行きがあって興味深い。互いの間の偏見やいまだ残るわだかまりについてもきっちり描いていた。
共同脚本、共同演出二人による終演後のアフタートークもよかった。観客からの質問を募ってもふだんほとんど手があがらないものだが、今日ばかりはさばきくれないくらいたくさん質問が集まった。平田さん、ソンさんもサービスたっぷりにふだん答えないような細かいことまで答えてくれていた。舞台の上の2002年と現在の日韓関係の状況の違いについて質問されて、個人同士が外国で出会うと習慣の近い日本人と韓国人が真っ先に仲良くなる。確かに今の国同士の関係はよくないけど、1980年のひどい状況と波の乱高下をみているとなんてことはないと、楽観的に答えていたのが印象的だった。
作・演出:平田オリザ、ソン・ギウン/吉祥寺シアター/自由席4000円/2015-06-13 18:00/★★★
出演:太田宏、森山貴邦、大竹直、佐藤誠、佐藤滋、村井まどか、河村竜也、木引優子、ブライアリー・ロング、マ・ドゥヨン、チョン・ジョンハ、ペク・ジョンスン、チョン・スジ、ソン・ミョンギュン、カン・ヒジェ、パク・ミンジ