フェスティバル/トーキョー14『透明な隣人 〜8-エイトによせて〜』

透明な隣人

同性カップル主軸の群像劇だ。人間関係を整理すると、まずメインの同性カップルのさち子と祥子。さち子は元ヘテロで別れた夫との間に娘灯がいる。過食症になった灯をさち子がひきとることになり、ふたりの間に波風が生じる。彼らの下の世代の同性カップル夏来と珠美はさらりと描かれるだけ。珠美が勤める会社のデリカシーがない先輩社員玉田は人間関係のハブの役割を果たしている。やはり同量の芽依子を友人の原口に紹介するが、原口は実はゲイで片思いの男性ぽんちゃんがいる。本多はヘテロで自分の家を避難所として利用している永未に好意をもっているがそれを言い出せない。永未はライターで祥子たちを取材する。ほかに、芽依子の妹七菜とバーのマスター風太。

演出はおもしろい。協奏曲のカデンツァみたいに何人かの役者に、ストーリーと関係なく見せ場が与えられ、歌を歌ったり、情動失禁的な演技をしたり、ラップや超人的な横転をしたり、おもしろい現代詩を奇妙な発音とイントネーションで朗読したりする。あと、伝聞ということを表現するのに、実際に役者に場面を再現させて、それを「とかいっちゃって」と伝聞している人がつなぐのは、ありそうであまりない演出だ。独特。

同性カップルや同性婚がテーマと言い切るには、戯曲の掘り下げが弱い気がした。関係ない枝葉が多すぎるのと、同性婚にいたっては50年後に日本で同性婚が制度化されたシーンを唐突にもってきて、ちょっと無理矢理感があった。食事のシーンでしめるのも若干陳腐かもしれない。

まあ群像劇としてはよくできているし、ユニークな演出はその荒削りなところを含めて今後楽しみだ。ちゃんとチェックしてみにいくことにしよう。

作・演出:西尾佳織/アサヒ・アートスクエア/自由席3000円/2014-11-16 15:00/★★

出演:稲毛礼子、兵藤公美、葉丸あすか、西山真来、遠藤麻衣、武田有史、野津あおい、内海正孝、宮崎裕海、松村翔子、呉城久美、黒川武彦