庭劇団ペニノ『大きなトランクの中の箱』
最初ペニノじゃなくベニノだと思っていた。ペニノだとなんだか間抜けな感じだし、なんかアレに似ていておかしいと思ったのだ。そうしたらほんとうにアレだった。椅子、チェスの駒、リコーダー、水筒、マスクの把手などあちこちにアレの意匠がちりばめられていて、思わず手を合わせたくなるくらい大量に出てきた。
そういう小道具を含めてセットがほんとうにすばらしい。次は何が出てくるんだろうとワクワクしっぱなしだった。不思議な国のアリス(チェスが出てくるからむしろ鏡の国のアリスの方か)的な世界観をさらにグロテスクにしたような感じだ。
物語も、アリスのかわりに中年男性が奇妙な世界に迷い込むという話。父親に対する承認欲求に、同性愛近親相姦願望が入り交じった妄想世界が展開する。そのねじれっぷりに、もし主人公が女性だったらどうなったかという想像をしてみたが、インパクトは強い分凄惨になってしまって、今回全編にあふれていたおかしみがなくなってしまっただろう。
パズルがでてくるのもアリス的だ。無限に広いチェスボードでキングが1ターンに縦横斜め周囲に一マスだけ動ける。悪魔は一度にひとつのマスに穴をあけることができる。ただし、キングがいるマスに穴をあけることはできない。悪魔はキングのまわりを穴で囲んで移動できないことにすることは可能だろうか?あるいはキングはいつまでも逃げ続けることができるか?おもしろい問題だ。
美的、知的興味をかきたてられるいままでみたことのない芝居だった。くせになる。
追記:チェスボードの問題は Angel problemというらしい。悪魔に必勝法があるようだ。
作・演出・美術:タニノクロウ/森下スタジオBスタジオ/自由席2800円/2013-04-27 14:00/★★★
出演:山田伊久磨、飯田一期、島田桃依、瀬口タエコ