青年団プロジュース『雲母坂』

作:松田正隆、演出:平田オリザ/青山円形劇場/指定席4800円/2001-11-17 19:00/無星

出演:金替康博、太田宏、鬼頭典子、桂憲一、山村崇子、能島瑞穂、井上三奈子、福士史麻、大塚洋、内田淳子、山内健司、木崎友紀子、松井周、奥田洋平、小林洋平

雲母坂と書いて「きららざか」と読む。よく雨が降るので「雲の母」ということでそういう名前がついたらしい。東京郊外のその坂にある(妻を亡くしたばかりの)次男の家に、三男夫婦と、四男が久しぶりに訪ねてくる。そこでのストーリー展開はなかなかに期待を持たせるものだった。だが、突然と舞台は彼らの故郷である島「ハル」に移る。松田正隆の持ち味は、きわめて日常的な世界の中に、時折垣間見える、幻想なのだが、「ハル」に移ってからは、幻想のてんこ盛り。大江健三郎の『同時代ゲーム』的な世界だ。まつろわぬ人々と秘術の物語。最初のうちは、そのグロテスクさを楽しむ余裕もあったが、休憩をはさんだ後半は、もう新しさもなくなったこれらの幻想がただただ悲惨に流れていくのを見送るばかり。感情移入の糸もぷっつりと途切れてしまった。そういうものを3時間もみせられてただただ苦痛。ぼくが作者に礫蜂起をしたい気分だった。普段の自作の戯曲では効果的な平田オリザの抑制的な演出方法も、今回は逆効果だったのではないだろうか。着ぐるみとか小道具を効果的に使って、松尾スズキあたりが演出すれば、最後のとってつけたような、赤ん坊にかわった父親のエピソードに、少しはリアリティーを感じられたかもしれない