チェルフィッチュ『現在地』

作・演出:岡田利規/神奈川芸術劇場大ホール/自由席3500円/2012-04-21 14:00/★★★

出演:山崎ルキノ、佐々木幸子、伊東沙保、南波圭、安藤真理、青柳いづみ、上村梓

なんといっても今回はフィクションなのだ。いや、いつもだってフィクションはフィクションだけど、それぞれの俳優は特定の役柄を演じるのではなく、生身の声と身体で、物語の語り手と役を務めている。舞台の上では「出来事」は起きず、語りとそれにあわせた身体の動きだけが現前していた。今回は、ひとりひとりに固定した役が与えられ、SF仕立てのストーリーが進行する。ふつうの演劇に近づいたともいえるけど、やはりチェルフィッチュはチェルフィッチュで、その微妙さが新鮮だった。

ただ「村」とよばれている場所で、村が滅亡するという噂がまことしやかに語られている。ドライブの途中青く光る雲を見て予兆だと考える人、端から噂をとりあわない人、どちらとも決めかねている人。どちらの立場が正しいとか問題にされない。人々は同じものをみてもまったく違う見方をし、互いのことをまったく理解できなくなってしまった。その事実だけが示される。まるで原発事故後の日本のように……。

役者7人は全員女性。伊東沙保さんをしばらくぶりにみられたのはうれしかった。

上演前会場が頻繁に揺れるので群発地震でもおきているのかと場内に不穏な空気が流れたところに、岡田利規さんがでてきて、同時に上演されている別の公演が激しいもので、その振動が共振していると説明してくれた。おそらくそのとき同時に開催されていたのは某スピリチュアル系タレントのイベントくらいで、あまり動きが激しい感じはしないのだが。劇中「インチキ占い師」というセリフが出てくるところでニヤリとしてしまった。