あうるすぽっとプロデュース『家電のように解り合えない』

あうるすぽっとプロデュース『家電のように解り合えない』

作・演出:岡田利規(美術:金氏徹平)/あうるすぽっと/指定席4800円/2011-09-24 19:30/★★★

出演:森山開次、青柳いづみ、安藤真理

作、演出の岡田利規、ダンスの森山開次、現代美術の金氏徹平によるコラボ作品。タイトルを内容より先に決めなくてはいけない演劇の世界では珍しいことだが、この作品ではタイトルがテーマを伝えきっている。つまり「家電」と「解り合うこと」だ。

「家電」については、金氏哲平の製作した美術はずばり家電をテーマにしたもので、ユニークな、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、テレビなど20近い「家電」が舞台狭しと並べられている。また、二人で一人的な女の子たちが話す前半の台詞は「家電」についての詩?を朗読するという形をとっていて、知ってそうで知らなかった家電についての豆知識、たとえば冷蔵庫が冷える原理とか電子レンジが料理を温める原理などがわかったのだった。

その詩?の周囲では森山開次のダンスが異物感たっぷりに繰り広げられていて、その異物感がすごすぎて、異物感以外のところはよくわからなかったのだけど、中盤、女の子たちが彼と解り合おうと一歩を踏み出す。そして、彼女たちは彼からダンスのレッスンを受け、実際に踊ってみせる。これがほんとうに不思議なんだけど、彼女たちのぎこちない動きは、主に、その楽しさの部分が、とてもよく理解できたのだ。そしてその動きを通すことによって、森山開次の洗練されたすきのない動きがようやくちゃんと目に入るようになってきた。

そして、たとえ相互理解に達することができなくても、理解しようと思っただけでも、十分目的は達していて、それは日々の生活の実践なんだよ、ということでまとめられる。いつもながら岡田利規の作品は、舞台が終わっても、それがそのまま社会と連続していることを強く感じさせる。