青年団リンク水素74%『謎の球体X』

作・演出：田川啓介／三鷹市芸術文化センター星のホール／自由席2500円／2011-09-10 18:30／★★

出演：古屋隆太、川隅奈保子、宮田真喜、菅原直樹、村井まどか、玉田真也、森岡望、由かほる

主人公の夫婦がいい。どこか間がぬけていて、常にどこかけがをし、突然たずねてきた中学時代のあまり仲の良くなかった同窓生に、あなただけが友達なのといわれて、5万円を貸してしまったりする妻増美。まわりからきちがいといわれ、一見粗暴だが、実は世間からのいわれのない迫害に苦しみ、家族だけで結束していこうとしている夫健児。この二人のキャラクターを創造しただけで、もうこの作品は成功だ。

そのほか、家が台風でとばされて父親がなくなり身を寄せるためにやってきた増美の妹奇子や、突然畳の下からあらわれた謎の男、おせっかいな大家の妻と、その病弱な夫など、どのキャラクターも個性的ですばらしく、彼らがかわすどこずれた会話が心底おもしろかった。

惜しむらくは、終盤、ちょっと散漫になってしまったことだ。由かほるという役者さんが、役を離れ、素の自分として今回の配役について不平をいうシーンはありきたりだし、舞台上の虚構の世界観をこわしてしまった気がする。もちろんこわした方がおもしろい芝居もあるけど、今回は、世界観を維持した方がよかったんじゃないだろうか。