KAAT神奈川芸術劇場プロデュース『未練の幽霊と怪物―「珊瑚」「円山町」―』

例によって前提知識ゼロで見始めたが第一部の途中でこれは能楽だいうことに気がついた。といっても能の知識は皆無なので細かいところは後から確認したのだが、能のフォーマットをほぼそのまま踏襲していた、
『珊瑚』と、『円山町』という2つの能曲が上演された。どちらも岡田利規による完全な書き下ろしで、前者は沖縄の辺野古基地建設に伴う環境問題、後者は東電OL殺人事件がモチーフとされている。そういう現代的なテーマを扱いながらも、ワキがシテである亡霊と出会い、間に地元住民役のアイが背景情報を説明し、クライマックスで、詠いとともにシテが舞い踊るという構成はまさに古典的な能そのものだ。
音楽や舞は現代的にアップデートされている。一人の演奏者が電子楽器を多重に鳴り響かせ、謡はくだけたわかりやすい言葉で状況や感情が歌われる。舞は細かく手足のふりがつけられたモダンダンスだ。
おそらく能楽をそのまま見てもよくわからず終わってしまった気がするが、今回のように構造はそのまま踏襲して要素を現代的なものに置き換えたことで、かえって能の本質、おもしろさが理解できた気がする。
思えば、チェルフィッチュとしての作品もどこか能の要素を感じる。岡田利規さんがこういうプロジェクトを手がけたのはとても自然なことだったのではないだろうか。
作・演出:岡田俊樹/神奈川芸術劇場/メインシーズンパスポート(35700円)/2026-02-28 18:00/★★★
出演:(シテ)アオイヤマダ、小栗基裕、(ワキ)石倉来輝、七瀬恋彩、清島千楓、(アイ)片桐はいり、(音楽監督・演奏)内橋和久、(詠手)里アンナ