宝石のエメラルド座『ライバルは自分自身 ANNEX』

「宝石のエメラルド座」というのは作品のタイトルの一部かと思っていたが、実際には団体名のようだ。実体があるわけではなさそうだが、名前を掲げることで今後の公演がやりやすくなるのかもしれない。かつての「演劇弁当猫ニャー」と比べると、まさに180度の転換である。
舞台はとある病院。そこで奮闘する人々を描いた、ナンセンスな群像劇といえるだろう。
外科部長はこれまで一度も手術を成功させたことがなく、ケンジくんという子どものオペを辞退しようとする。しかし「かつてのマラソン名選手・ミスター選手が復活すれば再びメスを握る」と誓う。そのミスター選手は股の両側に奇病を抱えている人物だ。
彼と競うのは、かつて外科部長の手術で亡くなった女性の夫。外科部長を毒殺しようとするが失敗し、逆になぜか「もう一度メスを握れ」と勧める立場に回る。さらにミスター選手はいま芸能事務所を経営しており、この病院の院長の娘を預かってタレントに育てようとしている。その娘には、ライバル関係にあるマラソン選手たちを描く映画でスポーツ記者を演じる仕事が舞い込む。物語全体が映画の中なのか外なのかは、曖昧にぶら下げられたままだ。
いまナンセンスコメディーが低調なのは、世の中そのものがナンセンスにあふれて飽和してしまったからかもしれない。だからこそ「宝石のエメラルド座」が、そんな時代においてもナンセンスを続けるための場になってほしいと願う。そのためには本人の頑張りが必要で、他に競争相手はいなさそうなので、まさに「ライバルは自分自身」といえそうだ。
役者陣の中では、ベテランの佐藤真弓さんが特に光っていた。どこにも着地せず漂い続ける物語に、血肉を与えて存在感を示していたように思う。
作・演出:ブルー&スカイ/ザ・スズナリ/指定席6500円/2025-08-23 18:00/★★★
出演:池谷のぶえ、佐藤真弓、吉増裕士、森一生、西出結、蕪崎俊平、大堀こういち