テアトロコントspecial『寸劇の庭』
3つの団体による。短編2つ、中編ひとつのコント集。ジャンルでいうとどれもナンセンスコメディー。浮世離れした毒にも薬にもならない笑いのはずで、まあそういうのを求めてもいたのだが、今回はこのジャンルがあまりにピッタリ世の中とリンクしていて驚いた。今やナンセンスコメディーをやるだけで鋭い批評やメタファーになる時代なのだった。
冒頭の劇団アンパサンド『目覚め』は偽情報が蔓延して正しい判断ができなくなる状況を見事な比喩で描き出していた。目を開いてちゃんと見ればどちらが悪霊でどちらが慣れ親しんだ妻/幼馴染から一目瞭然乗り切りはずだが、さまざまな情報に撹乱されて判断できなくなってしまう。直前にアメリカや兵庫県の選挙があったのでめちゃくちゃリアルに感じた。
次のテニスコート『だるま』は、霊能者に会うために部屋の中で待つ三人の男の物語。部屋の中には謎のだるまがあり、霊能者はいっこうにあらわれないまま謎解きがはじまる。コントとしての完成度はこれが一番高いかも知れない。展開がおもしろい。
最後の中編近現代不条理集合3人『逆流』は、無職の男が滞納した家賃の支払免除と引換に大家から息子を殺す計画を手伝ってほしいといわれる。引き受ける条件として男が追加で提示したのは、いま自分が仕方なくやっている壊れたトイレの掃除を住民による当番制にすること。彼らは住民の理解を得ようとひとりひとりを説得する。
目的はずれていくし、会話の論点もどんどんずれていって最初なにについて話していたのかよくわからなくなり結局物語の枠組も崩れて置いてけぼりにされる。こういうのはナンセンスコメディーでだけ見られる光景だと思っていたが考えてみるとネットの偽情報界隈では日常的に使われてる手法だ。
ナンセンスコメディー見にきてこれだけ現実に目を向けさせられるとは思っても見なかった。
『館」ときて『庭』。この『寸劇』のシリーズも2回目。『森』、『湖』、いくらでも考えられる。今後も続いていくのではないかと期待大だ。
作・演出:安藤奎、神谷圭介、小出圭祐、吉田正幸、ブルー&スカイ、大堀こういち/ユーロライブ/指定席4500円/2024-11-23 14:00/★★★
出演:神谷圭介、川崎麻里子、安藤奎、小出圭祐、吉田正幸、大堀こういち、吉増裕士、ブルー&スカイ