KAAT神奈川芸術劇場プロヂュース『人類史』

人類史

もともとはユヴァル・ノア・ハラルの『サピエンス全史』の舞台化という話だったけど、幕が開いてみると、ダイレクトな舞台化というわけじゃなく、参考文献的な扱いになっていた。だが、インスピレーションの大きな源なのは間違いない。どうやって舞台化するんだろうと思ってたが、思った以上に「忠実な」舞台化だった。

怜悧に現生人類(ホモサピエンス)の誕生から現在までの歴史を展開していく『サピエンス全史』の語り口からみると、若干方向性が違う気もするが、なんとダンスつきの音楽劇だった。第一幕ではまず200万年前のホモサピエンス誕生以前の猿人たちのシーンから始まり、『サピエンス全史』で語られる「革命」のうち最初の二つ。まず7万年前の「認知革命」で人類が言語能力を取得するシーン、そして1万年前、「農業革命」で貧富の差が拡大し身分制度が発生したあとの社会のシーンが描かれる。休憩後の第二幕は1616年。異端審問のあとローマ近郊の宿屋にやってきたガリレオ・ガリレイを中心として「科学革命」の幕開きが語られ、最後にそれ以降の人類の発展の歴史が綴られる。原爆灯火や原発事故も出てきたけど、概ね明るい賛歌として幕が閉じられる。

音楽が個人的に好みじゃなかったとか、各シーンの物語がちょっと図式的で単調だったとか、人類史の負の側面にもっと触れた方が深みが出た、とか不満がないわけじゃないけど、このテーマを舞台にのせて破綻なく仕上げたことは掛け値なしにすごい。

作・演出:谷賢一、音楽:志磨遼平、振付:エラ・ホチルド/神奈川芸術劇場ホール/S席7500円/★★

出演:東出昌大、昆夏美、山路和弘、秋葉陽司、浅沼圭、生島翔、植田崇幸、大久保眞希、奥村佳恵、小山萌子、谷本充弘、内藤治水、中林舞、名児耶ゆり、奈良坂潤紀、仁田晶凱、福原冠、村岡哲至