青年団『馬留徳三郎の一日』

馬留徳三郎の一日

地方の限界っぽい集落の、老夫婦二人が住む家が舞台。息子を名乗る男から電話がかかってきて、今から部下が訪ねるから金を渡してほしいという。古典的な詐欺の手口だが、金を受け取りにきた蔵本は、夫婦二人や近隣の人々の話に逆に翻弄されてしまう。ここでは誰も彼もが多かれ少なかれ認知に問題をかかえているのだ。

切実な題材ではあるが、舞台の上では見ててつらくなるシーンはなく、全編笑いにあふれていた。だからこそマジカルでシュールな展開を期待してしまったが、そういう方向には進まず、敗北の記憶の書き換えという、美しいのか、今の時代への風刺なのか、受けとめかた次第のエンディング。でも、いずれだったにせよ、切実さをあえて排除し、ゆるふわなリアリティが律している舞台の上では、収まりが悪く感じられたのだった。

山村崇子さんがキュートだった。

作:高山さなえ、演出:平田オリザ/座・高円寺/自由席4000円/2020-10-10 19:00/★★

出演:田村勝彦、羽場睦子、猪股俊明、山村崇子、山内健司、能島瑞穂、海津忠、折原アキラ、(声)永井秀樹