五反田団『いきしたい』
男二人、女一人の三人芝居。夫婦がこれから別居しようとしていて運び出す荷物を整理している。妻の方の荷物の一つである男の死体が、傍から引っ張り出されてくる。このままではまずいということで二人は捨てにいくための旅行の相談を始める。死体を車に積み込むと、やがて死体は平然と話し始める。彼は女の亡くなった前夫なのだった……。奇妙な三角関係の旅が始まる。
生と死の間の曖昧な境界で交わされる落ち着き先の見えない堂々巡りの会話がおもしろい。そういう会話に紛れ込んだきれはしがこの冥府めぐりの旅の中で象徴的な意味を帯びて再び現れる。抜けた歯、光るパンツ。これは象徴がリアルな力を持つ世界の出来事なのだ。例えば、記憶や夢の世界のような。
女が自ら明らかにするけど、二人の夫は、生と死に分割されているようでいて、実は生きてる方も女の元を去って、もはや死んでいるのとかわりはないのだ。一人残された女は、屋もの中で、最後に残された生のよすがである光を、まるで胎に宿すようにして抱え込む・・・・・・。
闇の中で女が手を強引に引かれて冥府に連れていかれるシーンはほんとうに怖気をふるった。はじめてみるけど谷田部美咲さんよかった。
作・演出:前田司郎/こまばアゴラ劇場/自由席4000円/2020-10-03 19:30/★★*★
出演:谷田部美咲、岩瀬亮、浅井浩介