五反田団『偉大なる生活の冒険』
2008年の再演らしいけど、みた記憶も記録もないので、たまたま見逃してしまったのだろう。
仕事もお金もなく元カノの家に居候し続けている男が主人公。やることといえば、拾ったファミコンで古いRPGをプレイすることだけだ。過去と現在の交錯、無為に流れてゆく時間。五反田団の特徴的な要素が詰め込まれている作品だ。
初演では主人公の年齢は前田司郎さんの実年齢にあわせて30歳に設定されていたようだが、今回は10年分年をとって40歳。モラトリアムの延長と言えた年齢から、もう後戻りがきかない年連になっている。絶望してもおかしくないが、主人公はまったく動ずることも絶望することもなく、どうにかなるだろうと楽観を決め込んでいる。
ラスト間際で、主人公が、カニ缶を食べながら、今の恋人との間がうまくいかなくなって泣き叫ぶ元カノに対して、そっちをみたらだめだ、呑みこもれてしまう、カニの味に集中しろと叫ぶシーンは笑っちゃうけど、切実に感じた。そういう生活を続けるには人生から逃げているようで実は人生と向き合わざるを得ず、楽観を続けるのにはスキルが必要なのだ。
くすっとした笑いの中に人生そのものが垣間見える作品だった。見終わった後空を見上げたくなったけど、夜だったので黒一色だった。
作・演出:前田司郎/アトリエヘリコプター/自由席3800円/2019-07-27 19:00/★★★
出演:前田司郎、内田慈、新井郁、玉田真也、神崎れな