城山羊の会『埋める女』

埋める女

俳優が観客に語りかけるシーンからはじまる。演劇ではふつうのことだけど考えてみると不思議だ。それはこの舞台の上の空間でも不思議なこととみなされて、トラックの運転手ゆたかがする話——真夜中にヒッチハイクの少女をひろって……——は往来の通行人に向けて話しているということになり、ごく自然な流れとしてYouTubeに投稿され周知になる。そこに少女自身や、立ち聞きしていた近所のタバコ屋の主人、さらにその内縁の妻でゆたかの前妻が次々とあらわれ、混乱がひろがってゆく。

シュールさと笑いに満ち満ちてそこかしこにペーソスを感じる舞台。近年の作品の中では間違いなくいちばん完成度が高い。

残念なことに城山羊の会は「今回でしばらくお休みをいただきます」とのこと。小劇場界の「しばらく」の用法を考えると遠い気持ちになるが、いつかまたこの世界観に浸れる日がくるのを願ってやまない。

作・演出:山内ケンジ/ザ・スズナリ/指定席3500円/2018-12-08 19:30/★★★★

出演:岩谷健司、福井夏、岡部たかし、金谷真由美、伊島空、奥田洋平、坂倉奈津子