モメラス『反復と循環に付随するぼんやりの冒険』
お金がテーマということで、路上で1000人の人に「あなたにとって、お金とはなんですか?」とインタビューしたそうだ。そのときの映像が舞台にも投影されて使われていた。
登場するのはほぼ直接にはお金と関係なく(とはいえお金に無関係な人間は現代にひとりもいない)、日本社会の片隅で生きる8人の人々で、彼らの群像劇だ。不妊治療中の女性、大音量で音楽をきくことに救いを求めるローンのコールセンターに勤める派遣社員の男性、整形でのぞみの顔をてにいれようとするOL、ストレスをかかえる女性教員、副業で投資に手を出しまわりを見下す意識高い系の男、デリヘルで働き泥酔して路上で寝る女、不登校の中学生、精巧な偽札をコピーしようとする芸術家。むしろ、彼らの問題はお金というより自分の中の空虚だ。まあ、これは現代という時代に生きる者だれもが罹患している業病のようなものなのだが。
山中志歩さんが演じた中学生の歩の物語が特にすばらしかった。
ちょっと思うのは、ひょっとすると、街頭インタビューはなくてもよかったのではないか。シャイな日本人にきいても、酔って気のいい人が通り一遍のことを答えてくれるだけで、社会とつながっているような雰囲気をだす効果しかない(もちろん、その効果に意味はあるが)。その系として、お金がテーマというのを打ち出す必要もなかったかもしれない。そして、無理に群像劇というスタイルにこだわる必要もない気がして、中学生の歩を中心にして役を組み替えた方がより物語の求心力が高まった気がする。
作・演出:松村翔子/BUoY北千住アートセンター/自由席3000円/2018-09-22 18:00/★★
出演:安藤真理、井神沙恵、上蓑佳代、海津忠、黒川武彦、曽田明宏、西山真来、山中志歩、(映像出演:矢野昌幸)