お布団『アガメムノン』
不勉強故、ギリシア悲劇についてはほとんど知識がない。『アガメムノン』も今日初めて知ったが、数少ないストーリーを知っているギリシア悲劇である『アンティゴネ』とおおきな共通点があることに気がついた。それは善悪の基準がひとつでなく複数あることを前提にしていて、それが物語を動かす要因になるところだ。
『アガメムノン』では、主人公は王として国を守るため自分の娘を犠牲にするが、それは国を単位とする善悪でいえば正しい行為だったかもしれない。でも彼がもうひとつ属している家族という共同体の善悪でいうと極悪非道のそしりを免れない。このふたつの善悪はどちらかが優先するというものではなく完全に直交した別々の基準なのだ。原作では、アガメムノンは妻クリュタイムネストラとその情夫により殺されてしまうが、今回の作品ではアガメムノンとクリュタイムネストラが対話をし、平行線のまま終わる。それによってこの善悪の複数性というテーマがより際だった気がする。
オール女性キャスト、服装はほぼ普段着でセリフも説明的だったので、全体的に抽象的だったが、ラストの対話はとても切実でリアルなものを感じた。
原案:アイスキュロス、作・演出:得地弘基/サブテレニアン/自由席2000円/2018-02-17 19:00/★★
出演:緒沢麻友、大蔵麻月、新田佑梨、原田つむぎ