駅から15分離れたマイナーな劇場だったこともあってか、道案内をかねて前提知識を解説する音声コンテンツが配布されていた。これは開演してすぐに世界観に入り込めるのでとてもいい試みだと思う。 ...
古典劇がベースの作品が主体のお布団初のオリジナル作品。とはいえ、古典劇のエッセンスが感じられる作品だ。 古典劇では複数の美徳や義務の間の葛藤がテーマとなるが、本作でも、(あたかも神と人の関係のように)クリエーターは自らが生み出したキャラクターをどのように操作してもよいという権利と、そのキャラクターが「壊された」ことで「彼女」を崇拝する「女」もまた「壊され」てしまうという葛藤的な構造が描かれている。古典劇では、葛藤はひとりの人格の上に起こるので、悲劇となって工事の解決を促すが、本作では、実は葛藤の場となる主体は存在せず、キャラクターである「彼女」も「女」も一方的に「壊されて」いくだけなのが、古典劇との違いだ。 ...
プラトン『対話篇』の中の一篇『クリトン』が原作。誹謗中傷で死刑に処されようとしているソクラテスを脱走させるために友人のクリトンがやってくるが、ソクラテスは悪法ともいえども法という論理を振りかざして、それを拒絶するという有名な話だ。この舞台では、それが漫才の話に移しかえられている。 ...
二演目のダブルヘッダーの一本目。ひとり芝居だ。 二部構成。第一部では男性、第二部では女性が語り手で、本来二人の役者で上縁するところをあえて女性ひとりでやっている。しかも戯曲の言葉を細かく区切って暫定的な意味を浮上させつつ、次の言葉をつなげることによりそれを裏切っていくという興味深い演出。この演出自体が独立したエンターテインメントになっていた。 ...
不勉強故、ギリシア悲劇についてはほとんど知識がない。『アガメムノン』も今日初めて知ったが、数少ないストーリーを知っているギリシア悲劇である『アンティゴネ』とおおきな共通点があることに気がついた。それは善悪の基準がひとつでなく複数あることを前提にしていて、それが物語を動かす要因になるところだ。 ...