『ドッグマンノーライフ』
前作『海底で履く靴には紐が無い』から1年が経過していることに驚かされた。ほぼ大谷能生さんのひとり芝居だった前作とはことなって今回は集団劇。オーディションで選ばれた若い俳優たちが出演している。
夫がリストラで主夫になり妻がスーパーに働きに出た夫婦を大谷能生、松村翔子の常連が演じ、その他の俳優はスーパーの同僚役。ラップのような軽口のようなモノローグと奇妙にねじれた身体の動き、そして、どこに連れて行かれるのかと思っているとどこにも行こうともしなかったのは前作と同じだ。
個人的には見るべきポイントが固定されていた分、前作の方が集中して見られた気がする。前作を含めて逆説的なおもしろさを味わうタイプの舞台だと思っていたのだが、本作はどうやら素で楽しんでいる人が少なからずいるみたいで、羨ましい。もともとマンガを読むのも不得意だし、動きから何かを読み取ることが苦手なのかもしれない。
アフタートークで「なぜドッグなのか」という観客からの質問(とてもいい質問だ!)に対して、山縣さんは、演出家と対比して俳優は犬のような存在になってしまっているのでそれをひっくり返そうという意図があってつけたと言っていて、この中心をわざとはずしてゆくメソッドの意図がちょっとだけわかったような気がした。ぜひ、俳優たちが待遇よく不安なく演劇に取り組める場所を作っていってほしい。
作・演出・振付:山縣太一/STスポット/自由席2500円/2016-06-09 20:00/★
出演・振付:松村翔子、山縣太一、上蓑佳代、中野志保実、矢野昌幸、横田僚平、藤倉めぐみ、大谷能生