『God Bless Baseball』
日韓合同作品。舞台上では日本語、韓国語、そして英語が飛び交い、それぞれの翻訳が表示される。
岡田利規は日韓関係は扱わないと決めていたそうだ。
野球のルールがわからないという若い女性二人に男性がルールを教えようとするがどうもうまく伝わらない。そういう彼も少年時代のトラウマで今は野球が嫌いになっている。そこへイチロー(のニセモノ)があらわれる。韓国語を話す男性が実は日本人の役で、日本語を話す女性が実は韓国人の役でというギミックもあって、前半ひたすら楽しい。
やはり後半は政治の話になる。日韓関係は扱わないという通り、描かれるのは第三項のアメリカとの関係だ。序盤から頭上から英語による音声が質問に答えたり豆知識を教えてくれて、野球の神様的な存在なのかな、英語で話すのは野球の発祥の地がアメリカだからかな、と思っていたのだが、実はそれはアメリカの象徴だったのだ。イチローはアメリカの代理人としての役割を果たす。
最後、未来のお話として、最初バックネットの照明に見えていたアメリカの恫喝混じりの庇護の象徴であるカサをドロドロに壊してゆくシーンで終わる。
このシーンは韓国での上演で喝采をもって受けとめられたそうだ。ぼくは正直なんだかしらけてしまったし、日本では政治的立場にかかわらず多かれ少なかれ同様な反応ではないだろうか。この違いがおもしろい。
上演のあと岡田利規さんの呼びかけで韓国におけるアートの検閲問題を取り上げるイベントをやっていた。日本の政権も強圧的で危うさがあるし、まだまだアメリカの傘の下から出るには時間がかかる気がした。
作・演出:岡田利規/あうるすぽっと/指定席4000円/2015-11-28 14:00/★★★
出演:イ・ユンジェ、捩子ぴじん、ウィ・ソンヒ、野津あおい