青年団『眠れない夜なんてない』

青年団『眠れない夜なんてない』

作・演出:平田オリザ/吉祥寺シアター/指定席3500円/2008-07-05 18:00/★★★★

出演:志賀廣太郎、大崎由利子、渡辺香奈、堀夏子、篠塚祥司、辻美奈子、大塚洋、山村崇子、山内健司、松田弘子、天明留理子、足立誠、ひらたよーこ、大竹直、髙橋智子

マレーシアの高原にある日本人向けのリゾート施設。リタイアして移住してきた人々とその家族、休暇で短期滞在の人々たちの姿を「夢」というキーワードをからめて描いてゆく。

老いと死というそれはそれで主軸になりうるテーマも扱われているが、今回はそこに集った人々がそれぞれにかかえる日本という祖国に対するぬぐいきれない違和感がメインテーマだ。重大な病を宣告されながら日本に帰りたくないという父親、学校時代の同調圧力をいまだにトラウマとして抱えている中年女性、そしてマレーシアのほうが楽だという元引きこもりの若者。

確かに相対的には日本は豊かでとても暮らしやすい国であるのは間違いないのだが、その実質に比べて各種世論調査などをみると自己評価がとても低い。実際、自殺率もとても高いわけだ。それは気の持ちようとか、思い込みによるものではなく、実体として確かに存在する何かがもたらしているのは間違いのないことだと思う。それが何かということは舞台の上ではあげつらわれることはなく、たとえば花瓶のなかの枯れた花のように、ある種の寂しさとして提示されるだけだ。

けっこうぼくにはそれがぐっときたのだった。