高橋源一郎『ゴーストバスターズ-冒険小説-』

ゴーストバスターズ―冒険小説

このところ新書ばかり読んでいたので久しぶりの小説だ。その中でも高橋源一郎を読んだのはほとんど前史といっていいくらい昔のことだ。本の題名も内容も忘れてしまったが、さまざまなパロディーや、ストーリーの流れの故意の破綻など、小説はここまで自由に書けるんだという驚きを感じたと思う。ただ、その自由さについていけなかった。

本書でもその自由さは健在で、ブッチとサンダースの「明日に向かって撃て!」コンビがゴースト退治に乗り出す。といってもそのゴーストはまったく正体不明で、遭遇してもそれがどのようなものか人に伝えることすらできない。だからその戦いのシーンは描かれない。その代わり、BA-SHOという名の俳人や、セルバンテスの『ドンキホーテ』、『ドクタースランプ』のキャラクター、作者本人とおぼしきタカハシという名の「正義の味方」、銀河鉄道888(999ではなく)など多彩な人々や乗り物が登場して、虚実が入り乱れる。でも、今回はちゃんとついていけた。その自由さの底に、自由にしたいんだけどどうしてもままならない根源的なものあることがわかったからだ。高橋源一郎はそれをゴーストと呼んでいる。

★★★