保坂和志『猫に時間の流れる』

猫に時間の流れる

保坂和志の小説には必ずといっていいほど猫が登場するが、これは猫に主軸をおいた作品。くろしろという嫌われ者のボス猫と主人公の関わりというか、すれ違う様を描いている。猫を擬人化したり逆に機械的なものとしてみるのではなく、猫には猫の人間にはわかりえない内的世界があるという描き方がとても新鮮だった。猫は近くにいる身近な存在だけど、人には彼または彼女を完全に理解することはできない。それは猫だけじゃないかもしれないけど。もう一編は猫をさらう話で『キャットナップ』。

★★★